授業風景2
 今回は紙をさらに大きくし、全紙(約1350㎜×690㎜)を半分に切った半截に8×8=64文字を書かせました。
 
 ところで、コメントに「千字文」とは何かというご質問をいただきました。
 広辞苑には、
 せんじもん【千字文】 梁の周興嗣が武帝の勅を奉じて撰。一巻。四言古詩、二五〇句から成り「天地玄黄」」に始まり「焉哉乎也」に終わる一千字があるから名づける。撰者が魏の鍾繇(しょうよう)の千字文を韻に従い順序を正したものという。中国の初学教科書、また習字手本として広く行われた。
 とありますが、何だかこれも難しいですね。まぁ、日本で言えば、「いろは歌」のようなもので、千文字の漢字にどれ一つとして同じものはなく、偏と旁や文字造形上のあらゆる要素が含まれていて、この千字文を書いた優れた古典の名品をお手本にして繰り返ししっかり練習すれば字が上達するとして、古くから書の恰好の教材として貴ばれてきたようです。

 しかし、この授業では千字文の古典作品をお手本にするのではなく、 活字を見ながら太く大きく、というのが目標でした。

今宮3
 これはそんな授業の中の二点。
 右の作品は前回のブログで、「頑張ったけどあともう一息。次回に期待します。ガンバレ!」と私がエールを送ったNさんの作品。何と、一週間前とは全く別人の如く豹変しました!。一気に、大きく太く濃く、そして力強い線と造形へと一変したのです。とても充実していて迫力さえあります。授業の目標に沿った生徒のこのような変身、そして成長は、指導する者にとってとても嬉しいことです。
 左の作品。これには見覚えがあるかもしれません。そう、前回の画像で一番左に写っていたMさんの作品です。64文字という多字数になっても彼女の用筆、造形は細心の注意を払いながらも全くぶれることなく一貫しています。大きく太く、という目標を実現しつつ、なおかつ決して一本調子になることなく、さらに線の太細や墨量の多寡など異なる要素を組み合わせてより複雑な、そして立体感のある作品に仕上げています。

 このような、今までの自分の常識の中にはなかったような新たな経験が生徒たち一人ひとりの可能性を拡げ、今後のより豊かで創造性に溢れる創作につながることを期待しています。