昨年の個展では、まずコラージュによる抽象作品から制作を始めました。その後、筆によるストロークを生かしたドローイングを主とする抽象作品に移行し、4月に入ってからようやく書作品の制作に取りかかりました。
 ドローイングによる抽象作品を紹介する前に、書作品を何点か紹介します。

 まず、「作品19」(240.6×329.4)。これは臨済宗中興の祖と称される江戸時代の禅僧、白隠慧鶴(はくいんえかく・1685~1768)の言葉。
⑭個展11・3659
 
 この作品は、白隠の「寝惚之眼覚」の中の言葉、
 「神や仏に形はないぞ、形なければ俗には知れぬ、やむこと得ずに形を表ず、形によるな名によるな、よればすなわち迷いなり。」
 の後半部分を切り取って書いたもので、白隠自身がこの文で伝えようとしたこと、それに加えて、あるいはまた独自にこの文を読み解くことによって、各自がそれぞれ自由に解釈・理解し、味わうことのできる言葉になったのではないかと思います。

 今回の書の制作は、この言葉との出会いあたりから始まりました。